Art 10
一つの現実
TSUBOMI ― この作品に込めた想い
この二枚は、想像して描いたものではありません。
私が実際に目の前で見た光景と、そのときの記憶を残すために描いた作品です。
一枚には、劣悪な環境の中、人間の手によって無造作に同じ籠へ入れられ、大きなマーモットから攻撃を受け、足を失ってしまった小さなマーモットを描きました。
絵の中では赤や白の流れとして表現していますが、私が目にした現実は、これよりもずっと生々しく、目を背けたくなるようなものでした。
もう一枚は、ある飼育場で目にした光景です。
暑い季節にもかかわらず、大量のマーモットが、ハエや糞尿の充満したコンクリートの小屋で、十分な空調もないまま過ごしていました。
外には、とても痩せた犬。
壊れかけた蛇口から流れ続ける水。
地面に置かれた包丁と、血のついたまな板。
周囲に散らばる動物の毛。
そして、その場所では、動物たちの命が「食べるもの」「利用するもの」として語られていました。
私はそこで見たものを、忘れることができませんでした。
だから、きれいに描くのでも、残酷さだけを描くのでもなく、私が見た「一つの現実」を、自分の記憶として残そうと思いました。
この絵の向こう側に、実際に生きていた動物たちがいたことを、少しだけ想像してもらえたらと思います。
ドクターマーモット ― 作品を見て
この光景は、私と蕾さんが現地で目の当たりにし、経験したものです。
この作品を見たとき、最初に感じたのは「これは過去の話として終わらせてはいけない」ということでした。
私たちが普段目にするのは、丸くて、立って、眠って、食べている愛らしいマーモットの姿です。
けれど世界には、その同じ動物たちが、人間の都合によって劣悪な環境に置かれている現実もあります。
「かわいい」、「面白い」などどいった、魅力だけでマーモットが語られる時代は終わりました。
大切なのは、ただ「かわいそう」と思うことではありません。
なぜその環境が生まれたのか。
なぜ命が物のように扱われてしまうのか。
そして、私たちは何を知り、何を選べるのか。
マーモットを好きになることと、マーモットを取り巻く現実を知ることは、別のことではないと思っています。
かわいい姿だけではなく、その命の背景まで知ろうとすること。
その先に、守れる命があるのだと思います。